世の中には途法も無い仁もあるものぢや、歌集の序を書けとある、人もあらうに此の俺に新派の歌集の序を書けとぢや。ああでも無い、かうでも無い、とひねつた末が此んなことに立至るのぢやらう。此の途法も無い処が即ち新の新たる極意かも知れん。
定めしひねくれた歌を詠んであるぢやらうと思ひながら手当り次第に繰り展げた処が、
高きより飛び下りるごとき心もて
この一生を
終るすべなきか
此ア面白い、ふン此の刹那の心を常住に持することが出来たら、至極ぢや。面白い処に気が着いたものぢや、面白く言ひまはしたものぢや。
非凡なる人のごとくにふるまへる
後のさびしさは
何にかたぐへむ
いや斯ういふ事は俺等の半生にしこたま有つた。此のさびしさを一生覚えずに過す人が、所謂当節の成功家ぢや。
何処やらに沢山の人が争ひて
鬮引くごとし
われも引きたし
何にしろ大混雑のおしあひへしあひで、鬮引の場に入るだけでも一難儀ぢやのに、やつとの思ひに引いたところで大概は空鬮ぢや。
何がなしにさびしくなれば
出てあるく男となりて
三月にもなれり
とある日に
酒をのみたくてならぬごとく
今日われ切に金を欲りせり
怒る時
かならずひとつ鉢を割り
九百九十九割りて死なまし
腕拱みて
このごろ思ふ
大いなる敵目の前に曜り出でよと
目の前の菓子皿などを
かりかりと噛みてみたくなりぬ
もどかしきかな
鏡とり
能ふかぎりのさまざまの顔をしてみぬ
泣き飽きし時
こころよく
我にはたらく仕事あれ
それを仕達げて死なむと思ふ
よごれたる足袋穿く時の
気味わるき思ひに似たる
思出もあり
さうぢや、そんなことがある、斯ういふ様な想ひは、俺にもある。二三十年もかけはなれた比の著者と比の読者との間にすら共通の感ぢやから、定めし総ての人にもあるのぢやらう。然る処俺等聞及んだ昔から今までの歌に、斯んな事をすなほに、ずばりと、大胆に率直に詠んだ歌といふものは一向に之れ無い。一寸開けて見てこれぢや、もつと面白い歌が比の集中に満ちて居るに違ひない。そもそも、歌は人の心を種として言葉の手品を使ふものとのみ合点して居た拙者は、斯ういふ種も仕掛も無い淮にも承知の出来る歌も亦当節新発明に為つて居たかと、くれぐれも感心仕る。新派といふものを途法もないものと感ちがひ致居りたる段、全く拙者のひねくれより起りたることと懺悔に及び候也。
犬の年の大水後
この集を両君に捧ぐ。予はすでに予のすべてを両君の前に示しつくしたるものの如し。従つて両君はここに歌はれたる歌の一一につきて最も多く知るの人なるを信ずればなり。
また一本をとりて亡児真一に手向く。この集の稿本を書肆の手に渡したるは汝の生れたる朝なりき。この集の稿料は汝の薬餌となりたり。而してこの集の見本刷を予の閲したるは汝の火葬の夜なりき。
明治四十一年夏以後の作一千余首中よ
り五百五十一首を抜きてこの集に収
む。集中五章、感興の来由するところ
相邇きをたづねて仮にわかてるのみ。
「秋風のこころよさに」は明治四十一
年秋の紀念なり。
目 次 |
我を愛する歌 …………………… 一 煙……………………………… 七九 秋風のこころよさに……………… 一三三 忘れがたき人…………………… 一六一 手套を脱ぐとき…………………… 二三一 |
我を愛する歌
東海の小島の磯の白砂に
われ泣きぬれて
蟹とたはむる
頬につたふ
なみだのごはず
一握の砂を示しし人を忘れず
大海にむかひて一人
七八日
泣きなむとすと家を出でにき
いたく錆びしピストル出でぬ
砂山の
砂を指もて掘りてありしに
ひと夜さに嵐来りて築きたる
この砂山は
何の墓ぞも
砂山の砂に腹這ひ
初恋の
いたみを遠くおもひ出づる日
砂山の裾によこたはる流木に
あたり見まはし
物言ひてみる
いのちなき砂のかなしさよ
さらさらと
握れば指のあひだより落つ
しつとりと
なみだを吸へる砂の玉
なみだは重きものにしあるかな
大という字を百あまり
砂に書き
死ぬことをやめて帰り来れり
目さまして猶起き出でぬ児の癖は
かなしき癖ぞ
母よ咎むな
ひと塊の土に涎し
泣く母の肖顔つくりぬ
かなしくもあるか
燈影なき室に我あり
父と母
壁のなかより杖つきて出づ
たはむれに母を背負ひて
そのあまり軽きに泣きて
三歩あゆまず
飄然と家を出でては
飄然と帰りし癖よ
友はわらへど
ふるさとの父の咳する度に斯く
咳の出づるや
病めばはかなし
わが泣くを少女等きかば
病犬の
月に吠ゆるに似たりといふらむ
何処やらむかすかに虫のなくごとき
こころ細さを
今日もおぼゆる
いと暗き
穴に心を吸はれゆくごとく思ひて
つかれて眠る
こころよく
我にはたらく仕事あれ
それを仕遂げて死なむと思ふ
こみ合へる電車の隅に
ちぢこまる
ゆふべゆふべの我のいとしさ
浅草の夜のにぎはひに
まぎれ入り
まぎれ出で来しさびしき心
愛犬の耳斬りてみぬ
あはれこれも
物に倦みたる心にかあらむ
鏡とり
能ふかぎりのさまざまの顔をしてみぬ
泣き飽きし時
なみだなみだ
不思議なるかな
それをもて洗へば心戯けたくなれり
呆れたる母の言葉に
気がつけば
茶碗を箸もて敲きてありき
草に臥て
おもふことなし
わが額に糞して鳥は空に遊べり
わが髭の
下向く癖がいきどほろし
このごろ憎き男に似たれば
森の奥より銃声聞ゆ
あはれあはれ
自ら死ぬる音のよろしさ
大木の幹に耳あて
小半日
堅き皮をばむしりてありき
「さばかりの事に死ぬるや」
「さばかりの事に生くるや」
止せ止せ問答
まれにある
この平なる心には
時計の鳴るもおもしろく聴く
ふと深き怖れを覚え
ぢつとして
やがて静かに臍をまさぐる
高山のいただきに登り
なにがなしに帽子をふりて
下り来しかな
何処やらに沢山の人があらそひて
鬮引くごとし
われも引きたし
怒る時
かならずひとつ鉢を割り
九百九十九割りて死なまし
いつも逢ふ電車の中の小男の
稜ある眼
このごろ気になる
鏡屋の前に来て
ふと驚きぬ
見すぼらしげに歩むものかも
何となく汽車に乗りたく思ひしのみ
汽車を下りしに
ゆくところなし
空家に入り
煙草のみたることありき
あはれただ一人居たきばかりに
何がなしに
さびしくなれば出てあるく男となりて
三月にもなれり
やはらかに積れる雪に
熱てる頬を埋むるごとき
恋してみたし
かなしきは
飽くなき利己の一念を
持てあましたる男にありけり
手も足も
室いつぱいに投げ出して
やがて静かに起きかへるかな
百年の長き眠りの覚めしごと
呿呻してまし
思ふことなしに
腕拱みて
このごろ思ふ
大いなる敵目の前に躍り出でよと
手が白く
且つ大なりき
非凡なる人といはるる男に会ひしに
こころよく
人を讃めてみたくなりにけり
利己の心に倦めるさびしさ
雨降れば
わが家の人誰も誰も沈める顔す
雨霽れよかし
高きより飛びおりるごとき心もて
この一生を
終るすべなきか
この日頃
ひそかに胸にやどりたる悔あり
われを笑はしめざり
へつらひを聞けば
腹立つわがこころ
あまりに我を知るがかなしき
知らぬ家たたき起して
遁げ来るがおもしろかりし
昔の恋しさ
非凡なる人のごとくにふるまへる
後のさびしさは
何にかたぐへむ
大いなる彼の身体が
憎かりき
その前にゆきて物を言ふ時
実務には役に立たざるうた人と
我を見る人に
金借りにけり
遠くより笛の音きこゆ
うなだれてある故やらむ
なみだ流るる
それもよしこれもよしとてある人の
その気がるさを
欲しくなりたり
死ぬことを
持薬をのむがごとくにも我はおもへり
心いためば
路傍に犬ながながと呿呻しぬ
われも真似しぬ
うらやましさに
真剣になりて竹もて犬を撃つ
小児の顔を
よしと思へり
ダイナモの
重き唸りのここちよさよ
あはれこのごとく物を言はまし
剽軽の性なりし友の死顔の
青き疲れが
いまも目にあり
気の変る人に仕へて
つくづくと
わが世がいやになりにけるかな
龍のごとくむなしき空に躍り出でて
消えゆく煙
見れば飽かなく
こころよき疲れなるかな
息もつかず
仕事をしたる後のこの疲れ
空寝入生呿呻など
なぜするや
思ふこと人にさとらせぬため
箸止めてふつと思ひぬ
やうやくに
世のならはしに慣れにけるかな
朝はやく
婚期を過ぎし妹の
恋文めける文を読めりけり
しつとりと
水を吸ひたる海綿の
重さに似たる心地おぼゆる
死ね死ねと己を怒り
もだしたる
心の底の暗きむなしさ
けものめく顔あり口をあけたてす
とのみ見てゐぬ
人の語るを
親と子と
はなればなれの心もて静かに対ふ
気まづきや何ぞ
かの船の
かの航海の船客の一人にてありき
死にかねたるは
目の前の菓子皿などを
かりかりと噛みてみたくなりぬ
もどかしきかな
よく笑ふ若き男の
死にたらば
すこしはこの世さびしくもなれ
何がなしに
息きれるまで駆け出してみたくなりたり
草原などを
あたらしき背広など着て
旅をせむ
しかく今年も思
ことさらに燈火
まぢまぢと思
わけもなきこと
浅草
腕組
長
尋常
ナイフ持
その顔
こそこその話
ピストル鳴
人生
時
子供
恋
とかくして家
日光
息
つかれたる牛
たらたらと
千万
路傍
腕
空
何
穏
鶴嘴
心
病
不平
おほどかの心
あるくにも
腹
ただひとり泣
来
宿屋
友
乞食
餓
新
栓
餓
かなしきは
喉
夜寒
一度
人
いのりてしこと
我
一人
一人
あまりある才
妻
おもひわづらふ友
打明
何
友
どんよりと
くもれる空
人
人並
わが友
深
誰
威張
かなしくもあるか
はたらけど
はたらけど猶
ぢつと手
何
このかなしみは
拭
とある日
酒
今日
水晶
わがこの心
何
事
且
わがこのごろの物
大
ひとつ欲
それにむかひて物
うぬ惚
合槌
施与
ある朝
鼻
味噌
こつこつと空地
耳
家
何
頭
日毎
遠方
今日
かなしき日
垢
かなしくも
ふるさとの胡桃
死
はばかりに人目
怖
一
かなしかり
何
邦人
目
家
この次
思
三年
或
焼
麺麭
たんたらたらたんたらたらと
雨滴
痛
ある日
室
その日
かうしては居
立
戸外
気
あららかに扉
すぐ開
ぢつとして
黒
堅
誰
われをなつかしくなるごとき
長
うすみどり
飲
薬
いつも睨
三日
蝋燭
人間
ひよつとして
われのみ知
あたらしき心
名
街
友
花
妻
何
此処
時
人
それにも
心
夜明
家
こころ冷
人
墓
かへりて眠
何
人
消
人
一人
うめくかなしさ
叱
わつと泣
その心
盗
心
かくれ家
放
よわき男
感
庭石
はたと時計
昔
顔
あくる日
さほどにもなきをさびしがるかな
いらだてる心
いざいざ
すこし呿呻
女
わがいひつけに背
見
ふがひなき
わが日
秋雨
男
負
かるがゆゑにや秋
わが抱
金
秋
くだらない小説
男
初秋
秋
今日
口
はても見
真直
こころを今日
何事
いそがしく
暮
何事
すこし経
またも俄
誰
ピストルにても撃
伊藤
やとばかり
桂
秋
一
病
思郷
目
己
涙
十四
青空
さびしくも消
われにし似
かの旅
ゆくりなくも
我
ほとばしる喞筒
心地
しばしは若
師
謎
わが学業
教室
ただ一人
かの城址
不来方
空
十五
かなしみといはばいふべき
物
我
晴
口笛
吹
夜
口笛
十
よく叱
髯
口真似
われと共
小鳥
後備大尉
城址
石
禁制
その後
あの頃
ともに遊
学校
黄
今
花
先
我
今
なかよくせしを
かなしと思
夏休
かへり来
若
ストライキ思
今
ひそかに淋
盛岡
露台
欄干
神
説
かの路傍
西風
内丸大路
かさこそ散
そのかみの愛読
大方
今
石
坂
我
愁
小鳥
飛
解剖
蚯蚓
かの校庭
かぎりなき知識
姉
人
蘇峯
校
まづしさのため
おどけたる手
我
博学
自
かたりきかせし
師
そのかみの学校
今
はたらきて居
田舎
三日
かへる友
茨島
われと行
才
眼
その頃
一人
わがこころ
けふもひそかに泣
友
先
かなしさを知
先
興
友
酔漢
人
わが友
むかしながらの太
見
おもひ過
三年
夢
わが眠
昔
そのむかし秀才
友
秋
近眼
おどけし歌
茂雄
わが妻
音楽
今
友
その後
名
わが恋
はじめて友
思
糸
若
とびさりしかな
二
ふるさとの訛
停車場
そを聴
やまひある獣
わがこころ
ふるさとのこと聞
ふと思
ふるさとにゐて日毎
三年
亡
たまひたる
地理
その昔
小学校
いかにかなりけむ
ふるさとの
かの路傍
今年
わかれをれば妹
赤
下駄
二日
今朝
にはかに恋
飴売
うしなひし
をさなき心
このごろは
母
秋
それとなく
郷里
秋
かにかくに渋民村
おもひでの山
おもひでの川
田
ほろびゆくふるさと人
心
あはれかの我
子等
やがてふるさとを棄
ふるさとを出
相会
よろこぶにまさるかなしみはなし
石
ふるさとを出
消
やはらかに柳
北上
泣
ふるさとの
村医
なつかしきかな
かの村
肺
間
小学
友
木賃宿
千代治等
子
わが旅
ある年
衣
女
うすのろの兄
不具
夜
我
栗毛
母
大形
今
六歳
その名
飄然
咳
意地悪
戦
生
肺
極道地主
よめとりの日
宗次郎
おかねが泣
大根
小心
気
ふるさとの秋
わが従兄
野山
酒
我
泣
酔
酒
刀
村
年
村
若
ほたる狩
川
山路
馬鈴薯
雨
都
あはれ我
金
心
友
性悪
あはれなりけり
閑古鳥
鳴
友
わが思
おほかたは正
ふるさとのたより着
今日
かの幸
きたなき恋
わがために
なやめる魂
讃美歌
あはれかの男
今
何
わが庭
薄月
折
わが村
初
若
霧
停車場
朝
汽車
はるかに北
襟
ふるさとの土
何
心
ふるさとに入
道
橋
見
そのかみの
わが学舎
かの家
春
秀子
そのかみの神童
かなしさよ
ふるさとに来
ふるさとの停車場路
川
胡桃
ふるさとの山
言
ふるさとの山
秋風のこころよさに
ふるさとの空
高
愁
皎
秋
物
かなしきは
秋風
稀
青
かなしみの玉
松
神
火
静
そを読
愁
いにしへ人
ものなべてうらはかなげに
暮
とりあつめたる悲
水潦
暮
秋雨
秋立
洗
思
愁
丘
名
秋
四
あと見
秋
かかる性
かなしむべかり
目
秋
神
わが為
長
かくしもあはれ物
さららさらと雨
庭
涙
ふるさとの寺
踏
小櫛
こころみに
いとけなき日
物
はたはたと黍
ふるさとの軒端
秋風
摩
はつかにも見
日記
風流男
泡雪
玉手
かりそめに忘
石
春
その昔
あまたたび夢
切
神無月
岩手
初雪
ひでり雨
前栽
萩
秋
あまりにさびし
烏
雨後
ほどよく濡
そのところどころ光
われ饑
細
饑
いつしかに
泣
我
汪然
ああ酒
立
蛼
そのかたはらの石
泣
力
口
癖
人
大願
若
物
そのやはらかき上目
愛
かくばかり熱
初恋
泣
長
会
よろこびをもて水
秋
鋼鉄
火
岩手山
秋
野
父
母
家
秋
恋
夜
長月
いつまでか
かくも幼
思
おくり来
忘
秋
このごろ
君
松
人
石馬
ほのかなる朽木
そがなかの蕈
秋
時雨
木伝
人
森
遠
木
世
まづ森
半神
はてもなく砂
戈壁
秋
あめつちに
わが悲
あまねき秋
うらがなしき
夜
拾
旅
ふるさとに来
げに静
忘れがたき人人
一
潮
砂山
今年
たのみつる年
指
旅
三度
汽車
したしかりけり
函館
おもひ出
耳
わがあとを追
知
辺土
船
いもうとの眼
津軽
目
傷心
友
をさなき時
橋
話
おそらくは生涯
わらひし友
今
あはれかの
眼鏡
女
友
その友
性
函館
友
矢
ふるさとの
麦
女
あたらしき洋書
香
一途
しらなみの寄
函館
思
朝
支那
まくら時計
漂泊
草稿
読
いくたびか死
死
わが来
函館
碑
なかば忘
むやむやと
口
乞食
とるに足
山
神
巻煙草
浪
磯
演習
汽車
訪
大川
郁雨
君
智慧
もちあぐみ
為
こころざし得
あつまりて酒
我
かなしめば高
酒
悶
若
数人
子
さりげなき高
酒
我
呿呻
夜汽車
別
雨
映
山間
雨
たえまなく雫
窓
真夜中
倶知安駅
女
札幌
かの秋
しかして今
アカシヤの街樾
秋
吹
しんとして幅広
秋
玉蜀黍
わが宿
初夜
札幌
石狩
柵
赤
かなしきは小樽
歌
声
泣
手
易者
いささかの銭
わが友
後姿
世
ひそかにも
誇
汝
謀叛気
いはれてしこと
かの年
初雪
我
椅子
かの友
今
負
あらそひの因
今
殴
殴
昔
汝
この咽喉
彼
あらそひて
いたく憎
友
あはれかの眉
弟
はつかに笑
わが妻
冬
植民地
平手
吹雪
友
酒
大
かなしき顔
樺太
新
友
治
飽
かなしかりけれ
共同
儲
詐欺
あをじろき頬
死
若
子
雪
われ見送
敵
やや長
わかれといふに
ゆるぎ出
人
負
みぞれ降
石狩
ツルゲエネフの物語
わが去
おもひやる旅出
死
わかれ来
ゆくりなく
つめたきものの頬
忘
ゆけどゆけど
山
うす紅
入日影
曠野
腹
しのびつつ
長路
乗合
剣
がちやりと鳴
名
宿屋
我
伴
口
かなしと思
今夜
泊
茶
水蒸気
列車
あかつきの色
ごおと鳴
乾
林
空知川
鳥
岸辺
寂莫
雪
長
いたく汽車
きれぎれに思
我
うたふごと駅
柔和
若
雪
処処
煙突
遠
笛
汽車
何事
日
汽車
さいはての駅
雪
さびしき町
しらしらと氷
千鳥
釧路
こほりたるインクの罎
火
涙
顔
それのみ昔
国
あはれかの国
酒
かなしみの滓
酒
寝
うれしとはせし
出
身
厨
わが酔
うたはざる女
いかになれるや
小奴
やはらかき
耳朶
よりそひて
深夜
女
死
これ見
咽喉
芸事
かれより優
女
舞
おのづから
悪酒
死
いろいろの
かなしきことを囁
いかにせしと言
あをじろき酔
面
かなしきは
かの白玉
キスの痕
酔
水
呼
火
ともしびの明
かよひ慣
きしきしと寒
かへりの廊下
不意
その膝
我
思
さらさらと氷
波
磯
死
恋
才
十年
酔
旅
吸
鼻
寒
波
白塗
外国
三味線
火事
大雪
神
遠
阿寒
郷里
身投
女
葡萄色
古
かの会合
よごれたる足袋
気味
思出
わが室
小説
おもひ出
浪淘沙
ながくも声
うたふがごとき旅
二
いつなりけむ
夢
その声
頬
流離
路
さりげなく言
さりげなく君
それだけのこと
ひややかに清
春
かかる思
世
黒
今
かの時
大切
胸
真白
瑕
流離
函館
こころ残
今
人
鬢
物
馬鈴薯
なれりけり
君
山
山
かなしき時
忘
ひよつとした事
忘
病
癒
四百里
君
こころ躍
あはれと思
かの声
すつきりと
胸
いそがしき生活
時折
誰
しみじみと
物
君
死
言
君
時
君
安
わかれ来
年
君
石狩
君
林檎
長
三年
我
手套を脱ぐ時
手套
何
こころかすめし思
いつしかに
情
髭
朝
湯槽
ゆるく息
夏
うがひ薬
病
つくづくと手
おもひ出
キスが上手
さびしきは
色
赤
新
そのたのしさも
長
旅
かへり来
わが窓
古文書
よごれたる
吸取紙
手
ここちよく
わが寝飽
薄
そを見
こころいつしか暗
ひやひやと
夜
医者
窓
塵
かなしみはあり
六年
古
棄
こころよく
春
目
赤煉瓦
むらさきに見
春
春
銀座
やはらかに降
よごれたる煉瓦
降
春
目
若
窓
あたらしき木
ただよへる
新開町
春
見
門札
そことなく
蜜柑
夕
にぎはしき若
こゑ聴
さびしくなりたり
何処
若
春
コニヤツクの酔
やはらかき
このかなしみのすずろなるかな
白
拭
酒場
乾
何処
石炭酸
赤赤
河
白
新
酢
こころに沁
空色
山羊
手
すがた見
息
酔
ひとしきり静
ゆふぐれの
厨
ひややかに罎
歯
かなしとも見
やや長
深夜
遠
病院
ほの白
淡
何時
かの大川
舞
用
ふと人
街
しめらへる煙草
おほよその
わが思
するどくも
夏
雨後
すずしげに飾
硝子
夏
君
白
袖
おちつかぬ我
このごろの
眼
どこやらに杭
大桶
雪
人気
けたたましく
電話
目
ややありて耳
真夜中
見
吸
心
朝朝
うがひの料
罎
夷
丘
小径
裏山
斑
秋
港町
とろろと鳴
潮
小春日
鳥影
すずろに思
ひとならび泳
家家
冬
京橋
新聞
灯
よく怒
日
怒
あさ風
柳
手
ゆゑもなく海
海
こころ傷
たひらなる海
そむけたる
目
今日
どれもどれも
恋
汽車
とある野中
夏草
朝
やつと間
堅
かの旅
おもひたる
我
ふと見
とある林
雨
わかれ来
燈火
青
いつも来
この酒肆
ゆふ日
白
かなしみが
酔
壁
若
旅
取
なつかしきにほひ身
初秋
気
いつか癒
秋
売
手垢
夏
ゆゑもなく憎
いつしかに親
秋
赤紙
国禁
書
売
本
路
今日
我
秋
大海
その片隅
秋
うるみたる目
目
いつも目
いつ見
毛糸
韈
葡萄色
長椅子
秋
ほそぼそと
其処
昼
夜
白
犬
夜
うす紅
染
あはれなる恋
ひとり呟
夜半
真白
手
寒
水
身体
葱
時
猫
三十路
気弱
おそれつつ
深夜
皮膚
しんとして眠
重
夜
立
やがて出
気
しつとりと夜霧
ながくも街
若
寄
あとなし人
曠野
帰
東京
銀行
舗石
青
ちよんちよんと
とある小藪
雪
十月
あたらしく
息
十月
しめりたる
長
むらさきの袖
空
公園
孩児
思
公園
ひさしぶりに公園
友
堅
公園
小鳥
ながめてしばし憩
晴
あゆみつつ
わがこのごろの衰
思出
おどろきぬ
プラタスの葉
公園
二度
このごろ見
公園
君
すでに七月
公園
思
身
忘
今日
捕吏
マチ擦
二
中
目
口笛
寝
わが友
今日
かの城址
夜
つとめ先
今
二三
いまはのきはに微
なみだ誘
真白
うまれて
やがて死
おそ秋
三尺四方
吸
死
胸
医者
底
死児
またも手
かなしみの強
さびしさよ
わが児
かなしくも
夜
息
ー(をはり)ー
明治四十三年十一月廿八日印刷
明治四十三年十二月 一日発行
著 者 石 川 啄 木
発行者 西 村 寅次郎
印刷者 横 田 五十吉
印刷所 横 田 活版所
発行所 東 雲 堂 書 店
■このファイルについて
標題:一握の砂
著者:石川啄木
本文:「一握の砂」 明治43年2月1日発行(初版)
新選 名著復刻全集 近代文学館 昭和47年4月10日 発行
参照:啄木全集 第一巻 歌集
1967年6月30日 初版第一刷発行
1972年6月30日 初版第六刷発行
発行所 筑摩書房
表記:原文の表記を尊重しますが、読みやすさに配慮して、以下のように扱います。
○旧字体は、現行の新字体に変えました。新字体がない場合は、旧字体をそのまま用いました。
○本文のかなづかいは、底本通りとしました。
○底本通り総ルビをふりました。
ただし、歌番号「427」の「我」だけには、ルビが振られていません。ルビは追加せず、そのままにしてあります。
○歌番号を追加しました。
○行間処理(行間200%)を行いました。
入力:今井安貴夫
ファイル作成:里実工房
公開:2005年3月12日 里実文庫