茲にぶん子となんよべる賤の女ありけり山蔭の桜のごと仇めける姿も柴人の朝なゆうなすきがてに詠るのみ知る人もなくてうき幾とせの春を過しけるをいつか都人の香をしたひきてかヽる山里に老朽なんよりはとく都にゆきてつま定めよかしなと様々にいひすかしければ乙女はうれしく鶯の谷間をいづる心地して岩清水に水鏡し髪ども都ぶりに取上げ紅葉の錦打まとひ今日は都にぞいでけるあはれ風雅男たちの好心にさそふ水莖のあと濃やかなる文どもたまひね井出の下紐とくとく
籬の菊におきまとふ霜月の末つかた
明治十九年十一月一日
■このファイルについて
標題:はしがき
著者:尾崎紅葉
本文:我楽多文庫 第九集(活版非売本)
「硯友社系雑誌集成」 ゆまに書房
昭和六十年四月二十三日 発行
表記:原文の表記を尊重しつつ、Webでの読みやすさを考慮して、以下のように扱います。
○誤字・脱字等は訂正せず、底本通りとしました。
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入力:今井安貴夫
ファイル作成:里実工房
公開:里実文庫
2006年4月30日