徒然草
主ある家には、すゞろなる人、心のまゝに入り来ることなし。主なき所には、道行人濫りに立ち入り、狐・梟やうの物も、人気に塞かれねば、所得顔に入り棲 み、木霊など云ふ、けしからぬ形も現はるゝものなり。
また、鏡には、色・像なき故に、万の影来 りて映る。鏡に色・像あらましかば、映らざらまし。
虚空よく物を容る。我等が心に念々のほしきまゝに来り浮ぶも、心といふもののなきにやあらん。心に主あらましかば、胸の中に、若干のことは入り来らざらまし。
松田史生氏が作成したテキストファイルを、岡島昭浩氏が手を加え、さらに江口聡氏がHTML化したファイルを以下のように変更しました。
変更箇所
ルビ付きHTMLファイルに変換
ルビをカタカナからひらがなに変更
行間処理(行間180%)
段落処理(形式段落ごとに<P>タグ追加、段落冒頭の一字下げを一行下げに変更)
変更作業:里実福太朗
変更終了:平成13年10月