徒然草
 

■第二百二十二段

竹谷乗願房たけだにのじようぐわんぼう、東二乗院とうにでうのヰんへ参られたりけるに、「亡者まうじや追善つヰぜんには、何ことか勝利しようり多き」とたづねさせ給ひければ、「光明真言くわうみやうしんごん・宝篋印陀羅尼ほうけういんだらに」と申されたりけるを、弟子ども、「いかにかくは申し給ひけるぞ。念仏ねんぶつに勝ること候ふまじとは、など申し給はぬぞ」と申しければ、「我しゆうなれば、さこそ申さまほしかりつれども、正しく、称名しょうみゃう追福ぶくしゆして巨益こやくあるべしと説ける経文を見及ばねば、何に見えたるぞとかさねて問はせ給はば、いかゞ申さんと思ひて、本経ほんぎょうの確かなるにつきて、この真言・陀羅尼をば申しつるなり」とぞ申されける。










松田史生氏が作成したテキストファイルを、岡島昭浩氏が手を加え、さらに江口聡氏がHTML化したファイルを以下のように変更しました。

変更箇所
  ルビ付きHTMLファイルに変換
  ルビをカタカナからひらがなに変更
  行間処理(行間180%)
  段落処理(形式段落ごとに<P>タグ追加、段落冒頭の一字下げを一行下げに変更)
変更作業:里実福太朗
変更終了:平成13年10月