徒然草
 

■第二百十六段

最明寺入道さいみやうじのにふだう鶴岡つるがをか社参しやさんついでに、足利左馬入道あしかがのさまのすけのもとへ、先づ使つかひを遣して、立ち入られたりけるに、あるじまうけられたりける やう一献いつこんに打ちあはび二献にこんに海老、三献さんこんにかいもちひにて止みぬ。その座には、亭主夫婦、隆辨りゆうべん僧正、主方あるじかたの人にてせられけり。さて、「年毎に給はる足利の染物そめもの、心もとなく候ふ」と申されければ、「用意し候ふ」とて、色々の染物三十、前にて、女房どもに小袖こそで調てうぜさせて、後に遣されけり。

その時見たる人の、近くまで侍りしが、語り侍りしなり。










松田史生氏が作成したテキストファイルを、岡島昭浩氏が手を加え、さらに江口聡氏がHTML化したファイルを以下のように変更しました。

変更箇所
  ルビ付きHTMLファイルに変換
  ルビをカタカナからひらがなに変更
  行間処理(行間180%)
  段落処理(形式段落ごとに<P>タグ追加、段落冒頭の一字下げを一行下げに変更)
変更作業:里実福太朗
変更終了:平成13年10月