徒然草
 

■第百九十六段

東大寺の神輿しんよ、東寺の若宮わかみやより帰座きざの時、源氏の公卿くぎやう参られけるに、この殿との大将だいしやうにて先を追はれけるを、土御門相国つちみかどのしやうこく、「社頭しやとうにて、警蹕けいひついかゞ侍るべからん」と申されければ、「随身ずヰじんの振舞は、兵杖ひやうぢやうの家が知ることに候」とばかり答へ給ひけり。

さて、後に仰せられけるは、「この相国しやうこく、北山抄ほくざんせう を見て、西宮せいきうの説をこそ知られざりけれ。眷属けんぞく悪鬼 あくき・悪神恐るゝ故に、神社にて、ことに先を追ふべき理あり」とぞ仰せられける。










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変更箇所
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変更作業:里実福太朗
変更終了:平成13年10月