徒然草
 

■第百五十四段

この人、東寺とうじの門に雨宿あまやどりせられたりけるに、かたは者どものあつまりゐたるが、手も足もゆがみ、うちかへりて、いづくも不具ふぐ異様ことやうなるを見て、とりどりにたぐひ なき曲物くせものなり、もつとも愛するにれりと思ひて、目守 まもり給ひけるほどに、やがてその興尽きようつきて、見にくゝ、いぶせくおぼえければ、たゞ素直すなほめづらしからぬ物にはかずと思ひて、帰りてのち、この間、植木を好みて、異様ことやうに曲折 きよくせつあるを求めて、目をよろこばしめつるは、かのかたはを愛するなりけりと、きようなく覚えければ、鉢に植ゑられける木ども、皆掘り捨てられにけり。

さもありぬべきことなり。










松田史生氏が作成したテキストファイルを、岡島昭浩氏が手を加え、さらに江口聡氏がHTML化したファイルを以下のように変更しました。

変更箇所
  ルビ付きHTMLファイルに変換
  ルビをカタカナからひらがなに変更
  行間処理(行間180%)
  段落処理(形式段落ごとに<P>タグ追加、段落冒頭の一字下げを一行下げに変更)
変更作業:里実福太朗
変更終了:平成13年10月