徒然草
この人、東寺の門に雨宿りせられたりけるに、かたは者どもの集りゐたるが、手も足も捩ぢ歪み、うち反りて、いづくも不具に異様なるを見て、とりどりに類 なき曲物なり、尤も愛するに足れりと思ひて、目守り給ひけるほどに、やがてその興尽きて、見にくゝ、いぶせく覚えければ、たゞ素直に珍らしからぬ物には如かずと思ひて、帰りて後、この間、植木を好みて、異様に曲折 あるを求めて、目を喜ばしめつるは、かのかたはを愛するなりけりと、興なく覚えければ、鉢に植ゑられける木ども、皆掘り捨てられにけり。
さもありぬべきことなり。
松田史生氏が作成したテキストファイルを、岡島昭浩氏が手を加え、さらに江口聡氏がHTML化したファイルを以下のように変更しました。
変更箇所
ルビ付きHTMLファイルに変換
ルビをカタカナからひらがなに変更
行間処理(行間180%)
段落処理(形式段落ごとに<P>タグ追加、段落冒頭の一字下げを一行下げに変更)
変更作業:里実福太朗
変更終了:平成13年10月