徒然草
 

■第百五十一段

或人あるひとの云はく、年五十ごじふになるまで上手に至らざらんげいをば捨つべきなり。励はげみ習ふべき行末ゆくすヱもなし。老人らうじんのことをば、人もえ笑はず。衆しゅに交りたるも、あいなく、見ぐるし。大方おほかたよろづのしわざはめて、いとまあるこそ、めやすく、あらまほしけれ。世俗のことにたづさはりて生涯をくらすは、下愚かぐの人なり。ゆかしくおぼえんことは、学びくとも、その趣 おもむきを知りなば、おぼつかなからずしてむべし。もとより、望むことなくして止まんは、第一のことなり。










松田史生氏が作成したテキストファイルを、岡島昭浩氏が手を加え、さらに江口聡氏がHTML化したファイルを以下のように変更しました。

変更箇所
  ルビ付きHTMLファイルに変換
  ルビをカタカナからひらがなに変更
  行間処理(行間180%)
  段落処理(形式段落ごとに<P>タグ追加、段落冒頭の一字下げを一行下げに変更)
変更作業:里実福太朗
変更終了:平成13年10月