徒然草
 

■第百四十三段

人の終焉しゆうえん有様ありさまのいみじかりしことなど、人の語るを聞くに、たゞ、静かにして乱れずと言はば心にくかるべきを、おろかなる人は、あやしく、ことなるさうを語りつけ、言ひし言葉も振舞ふるまひも、己れが好むかたに誉めなすこそ、その人の日来ひごろ本意 ほんいにもあらずやと覚ゆれ。

この大ことだいじは、権化ごんげの人もさだむべからず。博学はくがくの士もはかるべからず。己れたがふ所なくは、人の見聞くにはよるべからず。










松田史生氏が作成したテキストファイルを、岡島昭浩氏が手を加え、さらに江口聡氏がHTML化したファイルを以下のように変更しました。

変更箇所
  ルビ付きHTMLファイルに変換
  ルビをカタカナからひらがなに変更
  行間処理(行間180%)
  段落処理(形式段落ごとに<P>タグ追加、段落冒頭の一字下げを一行下げに変更)
変更作業:里実福太朗
変更終了:平成13年10月