徒然草
 

■第百四十段

死してたから残ることは、智者ちしやのせざるところなり。よからぬ物蓄たくはへ置きたるもつたなく、よき物は、心をめけんとはかなし。こちたく多かる、まして口惜くちをし。「我こそめ」など言ふ者どもありて、あとに争ひたる、さまあし。後のちたれ にとこころざす物あらば、生けらんうちにぞゆづるべき。

朝夕あさゆふなくてかなはざらん物こそあらめ、そのほかは、何も持たでぞあらまほしき。










松田史生氏が作成したテキストファイルを、岡島昭浩氏が手を加え、さらに江口聡氏がHTML化したファイルを以下のように変更しました。

変更箇所
  ルビ付きHTMLファイルに変換
  ルビをカタカナからひらがなに変更
  行間処理(行間180%)
  段落処理(形式段落ごとに<P>タグ追加、段落冒頭の一字下げを一行下げに変更)
変更作業:里実福太朗
変更終了:平成13年10月