徒然草
人の才能は、文明らかにして、聖の教を知れるを第一とす。次には、手書くこと、むねとすることはなくとも、これを習ふべし。学問に便りあらんためなり。次に、医術を習ふべし。身を養ひ、人を助け、忠孝の務も、医にあらずはあるべからず。次に、弓射、馬に乗ること、六芸に出だせり。必ずこれをうかゞふべし。文・武・医の道、まことに、欠けてはあるべからず。これを学ばんをば、いたづらなる人といふべからず。次に、食は、人の天なり。よく味はひを調へ知れる人、大きなる徳とすべし。次に細工、万に要多し。
この外のことども、多能は君子の恥づる処なり。詩歌に巧みに、糸竹に妙なるは幽玄の道、君臣
これを重くすといへども、今の世には、これをもちて世を治むること、漸くおろかになるに似たり。金はすぐれたれども、鉄
の益多きに及かざるが如し。
松田史生氏が作成したテキストファイルを、岡島昭浩氏が手を加え、さらに江口聡氏がHTML化したファイルを以下のように変更しました。
変更箇所
ルビ付きHTMLファイルに変換
ルビをカタカナからひらがなに変更
行間処理(行間180%)
段落処理(形式段落ごとに<P>タグ追加、段落冒頭の一字下げを一行下げに変更)
変更作業:里実福太朗
変更終了:平成13年10月