徒然草
 

■第百十九段

鎌倉の海に、かつをと言ふ魚は、かのさかひには、さうなきものにて、このごろもてなすものなり。それも、鎌倉の年寄としよりの申し侍りしは、「この魚、己れら若かりし世までは、はかばかしき人の前へ出づること侍らざりき。頭かしらは、下部しもべも食はず、切りて捨て侍りしものなり」と申しき。

かやうの物も、世のすヱになれば、かみざままでも入りたつわざにこそ侍れ。










松田史生氏が作成したテキストファイルを、岡島昭浩氏が手を加え、さらに江口聡氏がHTML化したファイルを以下のように変更しました。

変更箇所
  ルビ付きHTMLファイルに変換
  ルビをカタカナからひらがなに変更
  行間処理(行間180%)
  段落処理(形式段落ごとに<P>タグ追加、段落冒頭の一字下げを一行下げに変更)
変更作業:里実福太朗
変更終了:平成13年10月