徒然草
 

■第百十八段

こひあつもの食ひたる日は、びんそゝけずとなん。膠にかは にも作るものなれば、粘りたるものにこそ。

鯉ばかりこそ、御前ごぜんにても切らるゝものなれば、やんごとなきうをなり。鳥にはきじ、さうなきものなり。雉・松茸などは、御湯殿みゆどのの上にかかりたるも苦しからず。その外は、心うきことなり。中宮の御方おんかたの御湯殿の上の黒みだなかりの見えつるを、北山 きたやまの入道殿の御覧じて、帰らせ給ひて、やがて、御文おんふみにて、「かやうのもの、さながら、その姿にて御棚みたなにゐて候ひしこと、見慣はず、さまあしきことなり。はかばかしき人のさふらはぬ故にこそ」など申されたりけり。










松田史生氏が作成したテキストファイルを、岡島昭浩氏が手を加え、さらに江口聡氏がHTML化したファイルを以下のように変更しました。

変更箇所
  ルビ付きHTMLファイルに変換
  ルビをカタカナからひらがなに変更
  行間処理(行間180%)
  段落処理(形式段落ごとに<P>タグ追加、段落冒頭の一字下げを一行下げに変更)
変更作業:里実福太朗
変更終了:平成13年10月