徒然草
 

■第百五段

北の屋蔭やかげに消え残りたる雪の、いたうこほりたるに、さし寄せたる車のながえも、霜いたくきらめきて、有明ありあけの月、さやかなれども、隈なくはあらぬに、人離れなる御堂みだうらうに、なみなみにはあらずと見ゆるをとこをんなとなげしに尻かけて、物語するさまこそ、何ことかあらん、きすまじけれ。

かぶし・かたちなどいとよしと見えて、えもいはぬ匂ひのさとかほりたるこそ、をかしけれ。けはひなど、はつれつれ聞こえたるも、ゆかし。










松田史生氏が作成したテキストファイルを、岡島昭浩氏が手を加え、さらに江口聡氏がHTML化したファイルを以下のように変更しました。

変更箇所
  ルビ付きHTMLファイルに変換
  ルビをカタカナからひらがなに変更
  行間処理(行間180%)
  段落処理(形式段落ごとに<P>タグ追加、段落冒頭の一字下げを一行下げに変更)
変更作業:里実福太朗
変更終了:平成13年10月