徒然草
 

■第九十九段

堀川相国ほりかはのしやうこくは、美男びなんのたのしき人にて、そのこととなく過差くわさを好み給ひけり。御子おんこ基俊卿もととし大理だいりになして、庁務ちやうむ行はれけるに、庁屋ちようや唐櫃 からひつ見苦しとて、めでたく作り改めらるべきよし仰せられけるに、この唐櫃は、上古しやうこより伝はりて、その始めを知らず、数百年すひやくねんを経たり。累代るヰたい公物くもつ古弊こへいをもちて規模とす。たやすく改められ難き由、故実こしつの諸官等申しければ、そのこと止みにけり。










松田史生氏が作成したテキストファイルを、岡島昭浩氏が手を加え、さらに江口聡氏がHTML化したファイルを以下のように変更しました。

変更箇所
  ルビ付きHTMLファイルに変換
  ルビをカタカナからひらがなに変更
  行間処理(行間180%)
  段落処理(形式段落ごとに<P>タグ追加、段落冒頭の一字下げを一行下げに変更)
変更作業:里実福太朗
変更終了:平成13年10月