徒然草
尊きひじりの言ひ置きけることを書き付けて、一言芳談とかや名づけたる草子を見侍りしに、心に合ひて覚えしことども。
一 しやせまし、せずやあらましと思ふことは、おほやうは、せぬはよきなり。
一 後世を思はん者は、糂汰瓶一つも持つまじきことなり。持経・本尊に至るまで、よき物を持つ、よしなきことなり。
一 遁世者は、なきにことかけぬやうを計ひて過ぐる、最上のやうにてあるなり。
一 上臈は下臈に成り、智者は愚者に成り、徳人は貧に成り、能ある人は無能に成るべきなり。
一 仏道を願ふといふは、別のことなし。暇ある身になりて、世のことを心にかけぬ
を、第一の道とす。
この外もありしことども、覚えず。
松田史生氏が作成したテキストファイルを、岡島昭浩氏が手を加え、さらに江口聡氏がHTML化したファイルを以下のように変更しました。
変更箇所
ルビ付きHTMLファイルに変換
ルビをカタカナからひらがなに変更
行間処理(行間180%)
段落処理(形式段落ごとに<P>タグ追加、段落冒頭の一字下げを一行下げに変更)
変更作業:里実福太朗
変更終了:平成13年10月