徒然草
 

■第九十段

大納言法印ほふいん召使めしつかひし乙鶴丸おとづるまる、やすら殿といふ者を知りて、常にかよひしに、或時出でて帰り来たるを、法印、「いづくへ行きつるぞ」と問ひしかば、「やすら殿のがりまかりて候ふ」と言ふ。「そのやすら殿は、男か法師か」とまた問はれて、袖掻そでかき合せて、「いかゞ候ふらん。頭かしらをば見候はず」と答へ申しき。

などか、かしらばかりの見えざりけん。










松田史生氏が作成したテキストファイルを、岡島昭浩氏が手を加え、さらに江口聡氏がHTML化したファイルを以下のように変更しました。

変更箇所
  ルビ付きHTMLファイルに変換
  ルビをカタカナからひらがなに変更
  行間処理(行間180%)
  段落処理(形式段落ごとに<P>タグ追加、段落冒頭の一字下げを一行下げに変更)
変更作業:里実福太朗
変更終了:平成13年10月