徒然草
 

■第八十六段

惟継これつぐの中納言は、風月ふげつざえに富める人なり。一生精進いつしやうしやうじんにて、読経どつきやううちして、寺法師てらぼふし円伊僧正ヱんいんそうじやうと同宿して侍りけるに、文保ぶんぽう三井寺みヰでら焼かれし時、坊主にあひて、「御坊ごぼうをば寺法師とこそ申しつれど、寺はなければ、今よりは法師とこそ申さめ」と言はれけり。いみじき秀句しうくなりけり。










松田史生氏が作成したテキストファイルを、岡島昭浩氏が手を加え、さらに江口聡氏がHTML化したファイルを以下のように変更しました。

変更箇所
  ルビ付きHTMLファイルに変換
  ルビをカタカナからひらがなに変更
  行間処理(行間180%)
  段落処理(形式段落ごとに<P>タグ追加、段落冒頭の一字下げを一行下げに変更)
変更作業:里実福太朗
変更終了:平成13年10月