徒然草
 

■第八十四段

法顕三蔵ほつけんさんざうの、天竺てんぢくに渡りて、故郷ふるさとあふぎを見ては悲しび、病にしては漢のじきを願ひ給ひけることを聞きて、「さばかりの人の、無下むげにこそ心弱き気色けしきを人の国にて見え給ひけれ」と人の言ひしに、弘融僧都こうゆうそうづ「優いうに情ありける三蔵かな」と言ひたりしこそ、法師のやうにもあらず、心にくゝ覚えしか。










松田史生氏が作成したテキストファイルを、岡島昭浩氏が手を加え、さらに江口聡氏がHTML化したファイルを以下のように変更しました。

変更箇所
  ルビ付きHTMLファイルに変換
  ルビをカタカナからひらがなに変更
  行間処理(行間180%)
  段落処理(形式段落ごとに<P>タグ追加、段落冒頭の一字下げを一行下げに変更)
変更作業:里実福太朗
変更終了:平成13年10月