徒然草
 

■第五十五段

家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる。暑あつころわろき住居すまひは、堪へ難きことなり。

深き水は、すずしげなし。浅くて流れたる、はるかに涼し。細かなる物を見るに、遣戸やりどは、しとみの間よりも明し。天井の高きは、冬寒く、ともしび暗し。造作ざうさくは、用なき所を作りたる、見るも面白く、よろづの用にも立ちてよしとぞ、人の定め合ひ侍りし。










松田史生氏が作成したテキストファイルを、岡島昭浩氏が手を加え、さらに江口聡氏がHTML化したファイルを以下のように変更しました。

変更箇所
  ルビ付きHTMLファイルに変換
  ルビをカタカナからひらがなに変更
  行間処理(行間180%)
  段落処理(形式段落ごとに<P>タグ追加、段落冒頭の一字下げを一行下げに変更)
変更作業:里実福太朗
変更終了:平成13年10月