徒然草

■第四十七段

或人あるひと清水きよみづへ参りけるに、老いたる尼の行き連れたりけるが、道すがら、「くさめくさめ」と言ひもて行きければ、「尼御前あまごぜ、何ことをかくはのたまふぞ」と問ひけれども、いらへもせず、なほ言ひまざりけるを、度々問はれて、うち腹立ちて「やや。はなひたる時、かくまじなはねば死ぬるなりと申せば、養君やしなひぎみの、比叡山 ひえのやまちごにておはしますが、ただ今もや鼻ひ給はんと思へば、かく申すぞかし」と言ひけり。

有り難きこころざしなりけんかし。










松田史生氏が作成したテキストファイルを、岡島昭浩氏が手を加え、さらに江口聡氏がHTML化したファイルを以下のように変更しました。

変更箇所
  ルビ付きHTMLファイルに変換
  ルビをカタカナからひらがなに変更
  行間処理(行間180%)
  段落処理(形式段落ごとに<P>タグ追加、段落冒頭の一字下げを一行下げに変更)
変更作業:里実福太朗
変更終了:平成13年10月