徒然草

■第四十三段

春の暮つかた、のどやかにえんなる空に、いやしからぬ家の、奥深く、木立こだちものりて、庭に散りしをれたる花、見過みすぐ しがたきを、さしりて見れば、南面みなみおもての格子皆おろしてさびしげなるに、ひがしに向きて妻戸つまどのよきほどにあきたる、御簾みすの破れより見れば、かたちきよげなる男の、年廿はたちばかりにて、うちとけたれど、心にくく、のどやかなるさまして、机の上にふみをくりひろげて見ゐたり。

いかなる人なりけん、尋ね聞かまほし。










松田史生氏が作成したテキストファイルを、岡島昭浩氏が手を加え、さらに江口聡氏がHTML化したファイルを以下のように変更しました。

変更箇所
  ルビ付きHTMLファイルに変換
  ルビをカタカナからひらがなに変更
  行間処理(行間180%)
  段落処理(形式段落ごとに<P>タグ追加、段落冒頭の一字下げを一行下げに変更)
変更作業:里実福太朗
変更終了:平成13年10月