徒然草

■第二十六段

風も吹きあへずうつろふ、人の心の花に、馴れにし年月としつきを思へば、あはれと聞きしことごとに忘れぬものから、我が世のほかになりゆくならひこそ、き人の別れよりもまさりてかなしきものなれ。

されば、白き糸のまんことを悲しび、みちのちまたの分れんことを嘆く人もありけんかし。堀川院ほりかはのゐんの百首の歌の中に、

昔見しいも墻根かきねは荒れにけりつばなまじりのすみれのみして

さびしきけしき、さること侍りけん。










松田史生氏が作成したテキストファイルを、岡島昭浩氏が手を加え、さらに江口聡氏がHTML化したファイルを以下のように変更しました。

変更箇所
  ルビ付きHTMLファイルに変換
  ルビをカタカナからひらがなに変更
  行間処理(行間180%)
  段落処理(形式段落ごとに<P>タグ追加、段落冒頭の一字下げを一行下げに変更)
変更作業:里実福太朗
変更終了:平成13年10月