徒然草

■第十二段

同じ心ならん人としめやかに物語して、をかしきことも、世のはかなきことも、うらなく言ひなぐさまんこそうれしかるべきに、さる人あるまじければ、つゆたがはざらんと向ひゐたらんは、ただひとりある心地やせん。

たがひに言はんほどのことをば、「げに」と聞くかひあるものから、いささかたがふ所もあらん人こそ、「我はさやは思ふ」など争ひにくみ、「さるから、さぞ」ともうち語らはば、つれづれ慰まめと思へど、げには、少し、かこつかたも我と等しからざらん人は、大方のよしなしこと言はんほどこそあらめ、まめやかの心の友には、はるかにへだたる所のありぬべきぞ、わびしきや。












松田史生氏が作成したテキストファイルを、岡島昭浩氏が手を加え、さらに江口聡氏がHTML化したファイルを以下のように変更しました。

変更箇所
  ルビ付きHTMLファイルに変換
  ルビをカタカナからひらがなに変更
  行間処理(行間180%)
  段落処理(形式段落ごとに<P>タグ追加、段落冒頭の一字下げを一行下げに変更)
変更作業:里実福太朗
変更終了:平成13年10月