姥捨

       太宰 治

1

そのとき、 「いいの。あたしは、きちんと仕末しまついたします。はじめから覚悟かくごしていたことなのです。ほんとうに、もう。」変った声でつぶやいたので、 「それはいけない。おまえの覚悟というのは私にわかっている。ひとりで死んでゆくつもりか、でなければ、身ひとつでやけくそに落ちてゆくか、そんなところだろうと思う。おまえには、ちゃんとした親もあれば、弟もある。私は、おまえがそんな気でいるのを、知っていながら、はいそうですかとすまして見ているわけにゆかない。」などと、ふんべつありげなことを言っていながら、嘉七かしちも、ふっと死にたくなった。 「死のうか。一緒いっしょに死のう。神さまだってゆるしてくれる。」

2

ふたり、厳粛げんしゅく身支度みじたくをはじめた。

3

あやまった人を愛撫あいぶした妻と、妻をそのような行為こういにまで追いやるほど、それほど日常の生活を荒廃こうはいさせてしまった夫と、おたがい身の結末を死ぬことによってつけようと思った。早春の一日である。そのつきの生活費が十四、五円あった。それを、そっくり携帯けいたいした。そのほか、ふたりの着換きがえの着物ありったけ、嘉七のどてらと、かずあわせいちまい、帯二本、それだけしか残ってなかった。それを風呂敷ふろしきに包み、かず枝がかかえて、夫婦がめずらしくかたをならべての外出であった。夫にはマントがなかった。久留米絣くるめがすりの着物にハンチング、濃紺のうこんの絹の襟巻えりまきを首にむすんで、下駄げただけは、白く新しかった。妻にもコオトがなかった。羽織も着物も同じ矢絣やがすり模様の銘仙めいせんで、うすあかい外国製の布切ぬのきれのショオルが、不似合いに大きくその上半身をおおっていた。質屋の少し手前で夫婦はわかれた。

4

真昼の荻窪おぎくぼの駅には、ひそひそ人が出はいりしていた。嘉七は、駅のまえにだまって立って煙草たばこをふかしていた。きょときょと嘉七をさがし求めて、ふいと嘉七の姿を認めるや、ほとんどころげるようにけ寄って来て、 「成功よ。大成功。」とはしゃいでいた。「十五円も貸しやがった。ばかねえ。」

5

この女は死なぬ。死なせては、いけないひとだ。おれみたいに生活につぶされていない。まだまだ生活する力を残している。死ぬひとではない。死ぬことをくわだてたというだけで、このひとの世間への申しわけが立つはずだ。それだけで、いい。この人は、ゆるされるだろう。それでいい。おれだけ、ひとり死のう。 「それは、お手柄てがらだ。」と微笑びしょうしてほめてやって、そっと肩をたたいてやりたく思った。「あわせて三十円じゃないか。ちょっとした旅行ができるね。」

6

新宿までの切符きっぷを買った。新宿で降りて、それから薬屋に走った。そこで催眠剤さいみんざいの大箱を一個買い、それからほかの薬屋に行って別種の催眠剤を一箱買った。かずを店の外に待たせて置いて、嘉七かしちは笑いながらその薬品を買い求めたので、別段、薬屋にあやしまれることはなかった。さいごに三越みつこしにはいり、薬品部に行き、店の雑沓ざっとうゆえに少し大胆だいたんになり、大箱を二つ求めた。黒目がち、まじめそうな細面の女店員が、ちらと狐疑こぎしわ眉間みけんに浮べた。いやな顔をしたのだ。嘉七も、はっ、となった。急には微笑びしょうも、つくれなかった。薬品は、冷く手渡てわたされた。おれたちのうしろ姿を、背伸せのびして見ている。それを知っていながら、嘉七は、わざとかず枝にぴったり寄りうて人ごみの中を歩いた。自身こんなに平気で歩いていても、やはり、人から見ると、どこか異様なかげがあるのだ。嘉七は、かなしいと思った。三越では、それからかず枝は、特売場で白足袋しろたびを一足買い、嘉七は上等の外国煙草たばこを買って、外へ出た。自動車に乗り、浅草へ行った。活動館へはいって、そこでは荒城こうじょうの月という映画をやっていた。さいしょ田舎いなかの小学校の屋根やさくが映されて、小供の唱歌が聞えて来た。嘉七は、それに泣かされた。 「恋人どうしはね、」嘉七は暗闇くらやみのなかで笑いながら妻に話しかけた。「こうして活動を見ていながら、こうやって手をにぎり合っているものだそうだ。」ふびんさに、右手でもってかず枝の左手をたぐり寄せ、そのうえに嘉七のハンチングをかぶせてかくし、かず枝の小さい手をぐっと握ってみたが、流石さすがにかかる苦しい立場に置かれて在る夫婦の間では、それは、不潔に感じられ、おそろしくなって、嘉七は、そっと手をはなした。かず枝は、ひくく笑った。嘉七の不器用な冗談じょうだんに笑ったのではなく、映画のつまらぬギャグに笑い興じていたのだ。

7

このひとは、映画を見ていて幸福になれるつつましい、いい女だ。このひとを、ころしてはいけない。こんなひとが死ぬなんて、間違まちがいだ。 「死ぬの、よさないか?」 「ええ、どうぞ。」うっとり映画を見つづけながら、ちゃんと答えた。「あたし、ひとりで死ぬつもりなんですから。」

8

嘉七は、女体の不思議を感じた。活動館を出たときには、日が暮れていた。かず枝は、すしを食いたい、と言いだした。嘉七は、すしは生臭なまぐさくて好きでなかった。それに今夜は、も少し高価なものを食いたかった。 「すしは、困るな。」 「でも、あたしは、たべたい。」かず枝に、わがままの美徳を教えたのは、とうの嘉七であった、忍従にんじゅうのすまし顔の不純を例証して威張いばって教えた。

9

みんなおれにはねかえって来る。

10

すし屋で少しお酒を飲んだ。嘉七かしち牡蠣かきのフライをたのんだ。これが東京での最後のたべものになるのだ、と自分に言い聞かせてみて、流石さすがに苦笑であった。妻は、てっかをたべていた。 「おいしいか。」 「まずい。」しんから憎々にくにくしそうにそう言って、また一つ頬張ほおばり、「ああまずい。」

11

ふたりとも、あまり口をきかなかった。

12

すし屋を出て、それから漫才まんざい館にはいった。満員で座れなかった。入口からあふれるほど一ぱいのお客がし合いへし合いしながら立って見ていて、それでも、時々あはははと声をそろえて笑っていた。客たちにもまれもまれて、かずは、嘉七のところから、五けん以上も遠くへ引きはなされた。かず枝は、背がひくいから、お客のかきの間から舞台をのぞき見するのに大苦心のていであった。田舎いなかくさい小女に見えた。嘉七も、客にもまれながら、ちょいちょい背伸せのびしては、かず枝のその姿を心細げに追い求めているのだ。舞台よりも、かず枝の姿のほうを多く見ていた。黒い風呂敷包ふろしきづつみを胸にしっかりきかかえて、そのお荷物の中には薬品も包まれて在るのだが、頭をあちこち動かして舞台の芸人の有様を見ようとあせっているかず枝も、ときたまふっとりかえって嘉七の姿をさがし求めた。ちらとたがいの視線が合っても、べつだん、ふたり微笑びしょうもしなかった。なんでもない顔をしていて、けれども、やはり、安心だった。

13

あの女に、おれはずいぶん、お世話になった。それは、忘れてはならぬ。責任は、みんなおれに在るのだ。世の中のひとが、もし、あの人を指弾しだんするなら、おれは、どんなにでもして、あのひとをかばわなければならぬ。あの女は、いいひとだ。それは、おれが知っている。信じている。

14

こんどのことは? ああ、いけない、いけない。おれは、笑ってすませぬのだ。だめなのだ。あのことだけは、おれは平気でいられぬ。たまらないのだ。

15

ゆるせ。これは、おれの最後のエゴイズムだ。倫理りんりは、おれは、こらえることができる。感覚が、たまらぬのだ。とてもがまんができぬのだ。

16

笑いの波がわっと館内にひろがった。嘉七は、かず枝に目くばせして外に出た。 「水上みなかみに行こう、ね。」その前のとしのひと夏を、水上駅から徒歩で一時間ほど登って行き着ける谷川温泉という、山の中の温泉場で過した。真実くるし過ぎた一夏ではあったが、くるしすぎて、いまでは色彩しきさいの着いた絵葉書のように甘美かんびな思い出にさえなっていた。白い夕立の降りかかる山、川、かなしく死ねるように思われた。水上、と聞いて、かず枝のからだは急に生き生きして来た。 「あ、そんなら、あたし、甘栗あまぐりを買って行かなくちゃ。おばさんがね、たべたいたべたい言ってたの。」その宿の老妻に、かず枝は甘えて、また、愛されてもいたようであった。ほとんど素人しろうと下宿のような宿で、部屋も三つしかなかったし、内湯も無くて、すぐとなりの大きい旅館にお湯をもらいに行くか、雨降ってるときにはかさをさし、夜なら提灯ちょうちんかはだか蝋燭ろうそくもって、したの谷川まで降りていって川原の小さい野天風呂ぶろにひたらなければならなかった。老夫婦ふたりきりで子供もなかったようだし、それでも三つの部屋がたまにふさがることもあって、そんなときには老夫婦てんてこまいで、かずも台所で手伝いやら邪魔じゃまやらしていたようであった。おぜんにも、筋子すじこだの納豆なっとうだのついていて、宿屋の料理ではなかった。嘉七かしちには居心地よかった。老妻が歯痛をわずらい、見かねて嘉七が、アスピリンを与えたところ、ききすぎて、てもなくとろとろねむりこんでしまって、ふだんから老妻を可愛がっている主人は、心配そうにうろうろして、かず枝は大笑いであった。いちど、嘉七がひとり、頭をたれて宿ちかくの草むらをふらふら歩きまわって、ふと宿の玄関のほうを見たら、うす暗い玄関の階段の下のいたに、老妻が小さくぺたんと座ったまま、ぼんやり嘉七の姿をながめていて、それは嘉七のとうとい秘密のひとつになった。老妻といっても、四十四、五の福々しい顔の上品におっとりしたひとであった。主人は、養子らしかった。その老妻である。かず枝は、甘栗あまぐりを買い求めた。嘉七はすすめて、もすこし多く買わせた。

17

上野駅には、ふるさとのにおいがする。誰か、郷里のひとがいないかと、嘉七には、いつもおそろしかった。わけてもその夜は、おたな手代てだいと女中が藪入やぶいりでうろつきまわっているような身なりだったし、ずいぶん人目ひとめがはばかられた。売店で、かず枝はモダン日本の探偵たんてい小説特集号を買い、嘉七は、ウイスキイの小瓶こびんを買った。新潟行、十時半の汽車に乗りこんだ。

18

向い合って席に落ちついてから、ふたりはかすかに笑った。 「ね、あたし、こんな恰好かっこうをして、おばさん変に思わないかしら。」 「かまわないさ。ふたりで浅草へ活動見にいってその帰りに主人がよっぱらって、水上みなかみのおばさんとこに行こうってきかないから、そのまま来ましたって言えば、それでいい。」 「それも、そうね。」けろっとしていた。

19

すぐ、また言い出す。 「おばさん、おどろくでしょうね。」汽車が発車するまでは、やはり落ちつかぬ様子であった。 「よろこぶだろう。きっと。」発車した。かず枝は、ふっとこわばった顔になりきょろとプラットフォームを横目で見て、これでおしまいだ。度胸が出たのか、ひざ風呂敷包ふろしきづつみをほどいて雑誌を取り出し、ペエジをった。

20

嘉七は、あしがだるく、胸だけ不快にわくわくして、薬を飲むような気持でウイスキイを口のみした。

21

金があれば、なにも、この女を死なせなくてもいいのだ。相手の、あの男が、もすこしはっきりした男だったら、これはまた別な形もれるのだ、見ちゃおられぬ。この女の自殺は、意味がない。 「おい、私は、いい子かね。」だしぬけに嘉七かしちは、言い出した。「自分ばかり、いい子になろうと、しているのかね。」

22

声が大きかったので、かずはあわて、それから、まゆをけわしくしかめておこった。嘉七は、気弱く、にやにや笑った。 「だけどもね、」おどけて、わざと必要以上に声を落して、「おまえは、まだ、そんなに不仕合せじゃないのだよ。だって、おまえは、ふつうの女だもの。わるくもなければよくもない、本質から、ふつうの女だ。けれども、私はちがう。たいへんなやつだ。どうやら、これは、ふつう以下だ。」

23

汽車は赤羽あかばねをすぎ、大宮をすぎ、暗闇くらやみの中をどんどん走っていた。ウィスキイのよいもあり、また、汽車の速度にうながされて、嘉七は能弁になっていた。 「女房にょうぼうにあいそをつかされて、それだからとて、どうにもならず、こうしてうろうろ女房について回っているのは、どんなに見っともないものか、私は知っている。おろかだ。けれども、私は、いい子じゃない。いい子は、いやだ。なにも、私が人がよくて女にだまされ、そうしてその女をあきらめ切れず、女にひきずられて死んで、芸術の仲間たちから、純粋じゅんすいだ、世間の人たちから、気の弱いよい人だった、などそんないい加減な同情を得ようとしているのではないのだよ。おれは、おれ自身の苦しみに負けて死ぬのだ。なにも、おまえのために死ぬわけじゃない。私にも、いけないところが、たくさんあったのだ。ひとにたよりすぎた。ひとのちからを過信した。そのことも、また、そのほかのずかしい数々の私の失敗も、私自身、知っている。私は、なんとかして、あたりまえのひとの生活をしたくて、どんなに、いままで努めて来たか、おまえにも、それは、少しわかっていないか。わら一本、それにすがって生きていたのだ。ほんの少しの重さにもそのわらが切れそうで、私は一生懸命けんめいだったのに。わかっているだろうね。私が弱いのではなくて、くるしみが、重すぎるのだ。これは、愚痴ぐちだ。うらみだ。けれども、それを、口に出して、はっきり言わなければ、ひとは、いや、おまえだって、私の鉄面皮てつめんぴの強さを過信して、あの男は、くるしいくるしい言ったって、ポオズだ、身振みぶりだ、と、軽く見ている。」

24

かず枝は、なにか言いだしかけた。 「いや、いいんだ。おまえを非難しているんじゃないのです。おまえは、いいひとだ。いつでも、おまえは、素直だった。言葉のままに信じたひとだ。おまえを非難しようとは思わない。おまえよりもっともっと学問があり、ずいぶん古い友だちでも、私の苦しさを知らなかった。私の愛情を信じなかった。むりもないのだ。私は、つまり、下手へただったのさ。」そう言ってやって微笑びしょうしたら、かず一瞬いっしゅん、得意になり、 「わかりました。もういいいのよ。ほかのひとに聞えたら、たいへんじゃないの。」 「なんにも、わかっていないんだなあ。おまえには、私がよっぽどばかに見えているんだね。私は、ね、いま、自分でいい子になろうとしているところが、心のどこかの片隅かたすみに、やっぱりひそんでいるのではないかしら、とそれで苦しんでいるのだよ。おまえと一緒いっしょになって六、七年にもなるけれど、おまえは、いちども、いや、そんなことでおまえを非難しようとは思わない。むりもないことなのだ。おまえの責任ではない。」

25

かず枝は聞いていなかった。だまって雑誌を読みはじめていた。嘉七かしちは、いかめしい顔つきになり、真暗い窓にむかって独りごとのように語りつづけた。 「冗談じょうだんじゃないよ。なんで私がいい子なものか。人は、私を、なんと言っているか、うそつきの、なまけものの、自惚うぬぼれやの、ぜいたくやの、女たらしの、そのほか、まだまだ、おそろしくたくさんの悪い名前をもらっている。けれども、私は、だまっていた。一ことの弁解もしなかった。私には、私としての信念があったのだ。けれども、それは、口に出して言っちゃいけないことだ。それでは、なんにもならなくなるのだ。私は、やっぱり歴史的使命ということを考える。自分ひとりの幸福だけでは、生きて行けない。私は、歴史的に、悪役を買おうと思った。ユダの悪が強ければ強いほど、キリストのやさしさの光が増す。私は自身を滅亡めつぼうする人種だと思っていた。私の世界観がそう教えたのだ。強烈きょうれつなアンチテエゼを試みた。滅亡するものの悪をエムファサイズしてみせればみせるほど、次に生れる健康の光のばねも、それだけ強くはねかえって来る、それを信じていたのだ。私は、それをいのっていたのだ。私ひとりの身の上は、どうなってもかまわない。反立法としての私の役割が、次に生れる明朗に少しでも役立てば、それで私は、死んでもいいと思っていた。誰も、笑って、ほんとうにしないかも知れないが、実際それは、そう思っていたものだ。私は、そんなばかなのだ。私は、間違まちがっていたかも知れないね。やはり、どこかで私は、思いあがっていたのかも知れないね。それこそ、あまい夢かも知れない。人生は芝居しばいじゃないのだからね。おれは敗けてどうせ近く死ぬのだから、せめて君だけでも、しっかりやってくれ、という言葉は、これは間違いかも知れないね。一命すててつくった屍臭ししゅうふんぷんのごちそうは、犬も食うまい。与えられた人こそ、いいめいわくかもわからない。われひと共に栄えるのでなければ、意味をなさないのかも知れない。」窓は答えるはずはなかった。

26

嘉七は立って、よろよろトイレットのほうへ歩いていった。トイレットヘはいって、とびらをきちんとしめてから、ちょっと躊躇ちゅうちょして、ひたと両手合せた。いのる姿であった。みじんも、ポオズでなかった。

27

水上みなかみ駅に到着とうちゃくしたのは、朝の四時である。まだ、暗かった。心配していた雪もたいてい消えていて、駅のものかげ薄鼠うすねずみいろして静かにのこっているだけで、このぶんならば山上の谷川温泉まで歩いて行けるかも知れないと思ったが、それでも大事をとって嘉七かしちは駅前の自動車屋をたたき起した。

28

自動車がくねくね電光型に曲折しながら山をのぼるにつれて、野山がやみの空を明るくするほど真白に雪におおわれているのがわかって来た。 「寒いのね。こんなに寒いと思わなかったわ。東京では、もうセル着て歩いているひとだってあるのよ。」運転手にまで、身なりの申しわけを言っていた。「あ、そこを右。」

29

宿が近づいて、かずは活気をていして来た。「きっと、まだ寝ていることよ。」こんどは運転手に、「ええ、もすこしさき。」 「よし、ストップ。」嘉七が言った。「あとは歩く。」そのさきは、みちが細かった。

30

自動車をてて、嘉七もかず枝も足袋たびぎ、宿まで半丁ほどを歩いた。路面の雪はけかけたままあやうく薄く積っていて、ふたりの下駄げたをびしょれにした。宿の戸を叩こうとすると、すこしおくれて歩いて来たかず枝はすっとけ寄り、 「あたしに叩かせて。あたしが、おばさんを起すのよ。」手柄てがらを争う子供に似ていた。

31

宿の老夫婦は、おどろいた。言わば、静かにあわてていた。

32

嘉七は、ひとりさっさと二階にあがって、まえのとしの夏に暮した部屋にはいり、電灯のスイッチをひねった。かず枝の声が聞えて来る。 「それがねえ、おばさんのとこに行こうって、きかないのよ。芸術家って、子供ね。」自身のうそに気がついていないみたいに、はしゃいでいた。東京はセル、をまた言った。

33

そっと老妻が二階へあがって来て、ゆっくり部屋の雨戸をりあげながら、「よく来たねえ。」

34

と一こと言った。

35

そとは、いくらか明るくなっていて、まっ白な山腹が、すぐ目のまえに現われた。谷間をのぞいてみると、もやもや朝霧あさぎりの底に一条の谷川が黒く流れているのも見えた。 「おそろしく寒いね。」嘘である。そんなに寒いとは思わなかったのだが、「お酒、のみたいな。」 「だいじょうぶかい?」 「ああ、もうからだは、すっかりいいんだ。ふとったろう。」

36

そこへかず枝が、大きい火燵こたつを自分で運んで持って来た。 「ああ、重い。おばさん、これ、おじさんのを借りたわよ。おじさんが持っていってもいいと言ったの。寒くって、かなやしない。」嘉七のほうに目もくれず、ひとりで異様にはしゃいでいた。

37

ふたりきりになると急に真面目まじめになり、 「あたし、つかれてしまいました。お風呂ふろへはいって、それから、ひとねむり仕様しようと思うの。」 「したの野天風呂に行けるかしら。」 「ええ、行けるそうです。おじさんたちも、毎日はいりに行ってるんですって。」

38

主人が大きいわらぐつをはいて、きのう降りつもったばかりの雪をみかため踏みかためみちをつくってくれて、そのあとから嘉七かしち、かずがついて行き、薄明はくめいの谷川へ降りていった。主人が持参したござのうえに着物をぎ捨て、ふたり湯の中にからだをすべませる。かず枝のからだは、丸くふとっていた。今夜死ぬる物とは、どうしても、思えなかった。

39

主人がいなくなってから、嘉七は、 「あの辺かな?」と、朝霧あさぎりがゆっくり流れている白い山腹をあごでしゃくってみせた。 「でも、雪が深くて、のぼれないでしょう?」 「もっと下流がいいかな。水上みなかみの駅のほうには、雪がそんなになかったからね。」

40

死ぬる場所を語り合っていた。

41

宿にかえると蒲団ふとんかれていた。かず枝は、すぐそれにもぐりこんで雑誌を読みはじめた。かず枝の蒲団の足のほうに、大きい火燵こたつがいれられていて、温かそうであった。嘉七は、自分のほうの蒲団は、まくりあげて、テエブルのまえにあぐらをかき、火鉢ひばちにしがみつきながら、お酒を飲んだ。さかなは、缶詰かんづめかにと、干椎茸ほししいたけであった。林檎りんごもあった。 「おい、もう一晩のばさないか?」 「ええ、」妻は雑誌を見ながら答えた。「どうでも、いいけど。でも、お金たりなくなるかも知れないわよ。」 「いくらのこってんだい?」そんなことを聞きながら、嘉七は、つくづく、はずかしかった。

42

みれん。これは、いやらしいことだ。世の中で、いちばんだらしないことだ。こいつはいけない。おれが、こんなにぐずぐずしているのは、なんのことはない、この女のからだをしがっているせいではなかろうか。

43

嘉七は、閉口であった。

44

生きて、ふたたび、この女と暮して行く気はないのか。借銭、それも、義理のわるい借銭、これをどうする。汚名おめい、半気ちがいとしての汚名、これをどうする。病苦、人がそれを信じてくれない皮肉な病苦、これをどうする。そうして、肉親。 「ねえ、おまえは、やっぱり私の肉親に敗れたのだね。どうも、そうらしい。」

45

かず枝は、雑誌から目をはなさず、口早に答えた。 「そうよ、あたしは、どうせ気にいられないおよめよ。」 「いや、そうばかりは言えないぞ。たしかにおまえにも、努力の足りないところがあった。」 「もういいわよ。たくさんよ。」雑誌をほうりだして、「理くつばかり言ってるのね。だから、きらわれるのよ。」 「ああ、そうか。おまえは、おれを、きらいだったのだね。しつれいしたよ。」嘉七かしちは、酔漢すいかんみたいな口調で言った。

46

なぜ、おれは嫉妬しっとしないのだろう。やはり、おれは、自惚うぬぼれやなのであろうか。おれをきらうはずがない。それを信じているのだろうか。いかりさえない。れいのそのひとが、あまり弱すぎるせいであろうか。おれのこんな、ものの感じかたをこそ、倨傲きょごうというのではなかろうか。そんなら、おれの考えかたは、みなだめだ。おれの、これまでの生きかたは、みなだめだ。むりもないことだ、なぞと理解せず、なぜ単純ににくむことができないのか。そんな嫉妬こそ、つつましく、美しいじゃないか。重ねて四つ、という憤怒ふんぬこそ、高く素直なものではないか。細君にそむかれて、その打撃だげきのためにのみ死んでゆく姿こそ、清純の悲しみではないか。けれども、おれは、なんだ。みれんだの、いい子だの、ほとけづらだの、道徳だの、借銭だの、責任だの、お世話になっただの、アンチテエゼだの、歴史的義務だの、肉親だの、ああいけない。

47

嘉七は、棍棒こんぼうふりまわして、自分の頭をぐしゃとたたきつぶしたく思うのだ。 「ひと寝いりしてから、出発だ。決行、決行。」

48

嘉七は、自分の蒲団ふとんをどたばたひいて、それにもぐった。

49

よほどっていたので、どうにかねむれた。ぼんやり目がさめたのは、ひる少し過ぎで、嘉七は、わびしさにえられなかった。はね起きて、すぐまた、寒い寒いを言いながら、下のひとに、お酒をたのんだ。 「さあ、もう起きるのだよ。出発だ。」

50

かずは、口を小さくあけて眠っていた。きょとんと目をひらいて、 「あ、もう、そんな時間になったの?」 「いや、おひるすこしすぎただけだが、私はもう、かなわん。」

51

なにも考えたくなかった。はやく死にたかった。

52

それから、はやかった。このへんの温泉をついでにまわってみたいからと、かず枝に言わせて、宿を立った。空もからりと晴れていたし、私たちはぶらぶら歩いて途中とちゅうのけしきを見ながら山を下りるから、と自動車をことわり、一丁ほど歩いて、ふとりむくと、宿の老妻が、ずっとうしろを走って追いかけて来ていた。 「おい、おばさんが来たよ。」嘉七は不安であった。 「これ、なあ、」老妻は、顔をあからめて、嘉七かしちに紙包を差し出し、「真綿まわただよ。うちでつむいで、こしらえた。何もないのでな。」 「ありがとう。」と嘉七。 「おばさん、ま、そんな心配して。」とかず。何か、ふたり、ほっとしていた。

53

嘉七は、さっさと歩きだした。 「おだいじに、行きなよ。」 「おばさんもお達者で。」うしろでは、まだ挨拶あいさつしていた。嘉七はくるり回れ右して、 「おばさん、握手あくしゅ。」

54

手をつよくにぎられて老妻の顔には、気まり悪さと、それから恐怖きょうふの色まであらわれていた。 「ってるのよ。」かず枝は傍から注釈ちゅうしゃくした。

55

酔っていた。笑い笑い老妻とわかれ、だらだら山を下るにしたがって、雪もうすくなり、嘉七は小声で、あそこか、ここか、とかず枝に相談をはじめた。かず枝は、もっと水上みなかみの駅にちかいほうが、さびしくなくてよい、と言った。やがて、水上のまちが、眼下にくろく展開した。 「もはや、ゆうよはならん、ね。」嘉七は、陽気をよそおうて言った。 「ええ。」かず枝は、まじめにうなずいた。

56

みちの左側の杉林に、嘉七は、わざとゆっくりはいっていった。かず枝もつづいた。雪は、ほとんどなかった。落葉が厚く積っていて、じめじめぬかった。かまわず、ずんずん進んだ。急な勾配こうばいってのぼった。死ぬことにも努力がる。ふたり座れるほどの草原を、やっとさがし当てた。そこには、すこし日が当って、泉もあった。 「ここにしよう。」つかれていた。

57

かず枝はハンケチをいて座って嘉七に笑われた。かず枝は、ほとんど無言であった。風呂敷包ふろしきづつみから薬品をつぎつぎ取り出し、封を切った。嘉七は、それを取りあげて、 「薬のことは、私でなくちゃわからない。どれどれ、おまえは、これだけのめばいい。」 「すくないのねえ。これだけで死ねるの?」 「はじめのひとは、それだけで死ねます。私は、しじゅうのんでいるから、おまえの十倍はのまなければいけないのです。生きのこったら、めもあてられんからなあ。」生きのこったら、牢屋ろうやだ。

58

けれどもおれは、かず枝に生き残らせて、そうして卑屈ひくつ復讐ふくしゅうをとげようとしているのではないか。まさか、そんな、あまったるい通俗つうぞく小説じみた、──腹立たしくさえなって、嘉七は、てのひらからあふれるほどの錠剤じょうざいを泉の水で、ぐっ、ぐっとのんだ。かず枝も、下手へたな手つきで一緒いっしょにのんだ。

59

接吻せっぷんして、ふたりならんで寝ころんで、 「じゃあ、おわかれだ。生き残ったやつは、つよく生きるんだぞ。」

60

嘉七かしちは、催眠剤さいみんざいだけでは、なかなか死ねないことを知っていた。そっと自分のからだをがけのふちまで移動させて、兵古帯へこおびをほどき、首に巻きつけ、そのはしくわに似た幹にしばり、ねむると同時に崖からすべり落ちて、そうしてくびれて死ぬる、そんな仕掛しかけにして置いた。まえから、そのために崖のうえのこの草原を、とくに選定したのである。眠った。ずるずる滑っているのをかすかに意識した。

61

寒い。目をあいた。まっくらだった。月かげがこぼれ落ちて、ここは?──はっと気付いた。

62

おれは生き残った。

63

のどへ手をやる。兵古帯は、ちゃんとからみついている。こしが、つめたかった。水たまりに落ちていた。それでわかった。崖に沿って垂直に下に落ちず、からだが横転して、崖のうえの窪地くぼちに落ちんだ。窪地には、泉からちょろちょろ流れ出す水がたまって、嘉七の背中から腰にかけて骨までこおるほど冷たかった。

64

おれは、生きた。死ねなかったのだ。これは、厳粛げんしゅくの事実だ。このうえは、かずを死なせてはならない。ああ、生きているように、生きているように。

65

四肢萎ししなえて、起きあがることさえ容易でなかった。渾身こんしんのちからで、起き直り、木の幹に結びつけた兵古帯をほどいて首からはずし、水たまりの中にあぐらをかいて、あたりをそっと見回した。かず枝の姿は、無かった。

66

いまわって、かず枝をさがした。崖の下に、黒い物体を認めた。小さい犬ころのようにも見えた。そろそろ崖を這い降りて、近づいて見ると、かず枝であった。そのあしをつかんでみると、冷たかった。死んだか? 自分の手のひらを、かず枝の口に軽くあてて、呼吸をしらべた。無かった。ばか! 死にやがった。わがままなやつだ。異様な憤怒ふんぬで、かっとなった。あらあらしく手首をつかんで脈をしらべた。かすかに脈拍みゃくはくが感じられた。生きている。生きている。胸に手をいれてみた。温かった。なあんだ。ばかなやつ。生きていやがる。えらいぞ、偉いぞ。ずいぶん、いとしく思われた。あれくらいの分量で、まさか死ぬわけはない。ああ、あ。多少の幸福感をもって、かず枝の傍に、仰向あおむけに寝ころがった。それ切り嘉七は、また、わからなくなった。

67

二度目にめがさめたときには、傍のかず枝は、ぐうぐう大きないびきをかいていた。嘉七は、それを聞いていながら、ずかしいほどであった。丈夫じょうぶなやつだ。 「おい、かず枝。しっかりしろ。生きちゃった。ふたりとも、生きちゃった。」苦笑しながら、かず枝のかたをゆすぶった。

68

かず枝は、安楽そうに眠りこけていた。深夜の山の杉の木は、にょきにょきだまってつっ立って、とがった針のこずえには、冷い半月がかかっていた。なぜか、なみだが出た。しくしく嗚咽おえつをはじめた。おれは、まだまだ子供だ。子供が、なんでこんな苦労をしなければならぬのか。

69

突然とつぜん、傍のかずが、さけび出した。 「おばさん。いたいよう。胸が、いたいよう。」笛の音に似ていた。

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嘉七かしち驚愕きょうがくした。こんな大きな声を出して、もし、誰かふもとみちを通るひとにでも聞かれたら、たまったものでないと思った。 「かず枝、ここは、宿ではないんだよ。おばさんなんていないのだよ。」

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わかるはずがなかった。いたいよう、いたいようと叫びながら、からだを苦しげにくねくねさせて、そのうちにころころ下にころがっていった。ゆるい勾配こうばいが、麓の街道かいどうまでもかず枝のからだをころがして行くように思われ、嘉七も無理に自分のからだをころがしてそのあとを追った。一本の杉の木にさえぎ止められ、かず枝は、その幹にまつわりついて、 「おばさん、寒いよう。火燵こたつもって来てよう。」と高く叫んでいた。

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近寄って、月光に照されたかず枝を見ると、もはや、人の姿ではなかった。かみは、ほどけて、しかもその髪には、杉の朽葉くちばが一ぱいついて、獅子ししの精の髪のように、山姥やまうばの髪のように、あらく大きく乱れていた。

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しっかりしなければ、おれだけでも、しっかりしなければ。嘉七は、よろよろ立ちあがって、かず枝をきかかえ、また杉林のおくのほうへ引きかえそうと努めた。つんのめり、いあがり、ずり落ち、木の根にすがり、土をき掻き、少しずつ少しずつかず枝のからだを林の奥へ引きずりあげた。何時間、そのような、虫の努力をつづけていたろう。

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ああ、もういやだ。この女は、おれには重すぎる。いいひとだが、おれの手にあまる。おれは、無力の人間だ。おれは一生、このひとのために、こんな苦労をしなければ、ならぬのか。いやだ、もういやだ。わかれよう。おれは、おれのちからで、つくせるところまで尽した。

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そのとき、はっきり決心がついた。

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この女は、だめだ。おれにだけ、無際限にたよっている。ひとから、なんと言われたっていい。おれは、この女とわかれる。

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夜明けが近くなって来た。空が白くなりはじめたのである。かず枝も、だんだんおとなしくなって来た。朝霧あさぎりが、もやもや木立に充満じゅうまんしている。

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単純になろう。単純になろう。男らしさ、というこの言葉の単純性を笑うまい。人間は、素朴そぼくに生きるより、他に、生きかたがないものだ。

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かたわらに寝ているかずかみの、杉の朽葉くちばを、一つ一つたんねんに取ってやりながら、

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おれは、この女を愛している。どうしていいか、わからないほど愛している。そいつが、おれの苦悩くのうのはじまりなんだ。けれども、もう、いい。おれは、愛しながら遠ざかりうる、何かしら強さを得た。生きて行くためには、愛をさえ犠牲ぎせいにしなければならぬ。なんだ、あたりまえのことじゃないか。世間の人は、みんなそうして生きている。あたりまえに生きるのだ。生きてゆくには、それよりほかに仕方がない。おれは、天才でない。気ちがいじゃない。

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ひるすこし過ぎまで、かず枝は、たっぷりねむった。そのあいだに、嘉七かしちは、よろめきながらも自分のれた着物をいで、かわかし、また、かず枝の下駄げたさがしまわったり、薬品の空箱を土にめたり、かず枝の着物のどろをハンケチできとったり、その他たくさんの仕事をした。

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かず枝は、めをさまして、嘉七から昨夜のことをいろいろ聞かされ、 「とうさん、すみません。」と言って、ぴょこんと頭をさげた。嘉七は、笑った。

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嘉七のほうは、もう歩けるようになっていたが、かず枝は、だめであった。しばらく、ふたりは座ったまま、きょうこれからのことを相談し合った。お金は、まだじゅう円ちかくのこっていた。嘉七は、ふたり一緒いっしょに東京へかえることを主張したが、かず枝は、着物もひどくよごれているし、とてもこのままでは汽車に乗れない、と言い、結局、かず枝は、また自動車で谷川温泉へかえり、おばさんに、よその温泉場で散歩して転んで、着物を汚したとか、なんとか下手へたうそを言って、嘉七が東京にさきにかえって着換きがえの着物とお金を持ってまたむかえに来るまで、宿で静養している、ということに手筈てはずがきまった。嘉七の着物がかわいたので、嘉七はひとり杉林から脱けて、水上みなかみのまちに出て、せんべいとキャラメルと、サイダーを買い、また山に引きかえして来て、かず枝と一緒にたべた。かず枝は、サイダーを一口のんでいた。

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暗くなるまで、ふたりでいた。かず枝が、やっとどうにか歩けるようになって、ふたりこっそり杉林を出た。かず枝を自動車に乗せて谷川にやってから、嘉七は、ひとりで汽車で東京に帰った。

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あとは、かず枝の叔父おじに事情を打ち明けて一切いっさいをたのんだ。無口な叔父は、 「残念だなあ。」

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といかにも、残念そうにしていた。

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叔父がかず枝を連れてかえって、叔父の家に引きとり、 「かず枝のやつ、宿の娘みたいに、夜寝るときは、亭主ていしゅとおかみの間に蒲団ふとんひかせて、のんびり寝ていた。おかしなやつだね。」と言って、首をちぢめて笑った。他には、何も言わなかった。

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この叔父おじは、いいひとだった。嘉七かしちがはっきりかずとわかれてからも、嘉七と、なんのこだわりもなく酒をのんで遊びまわった。それでも、時おり、 「かず枝も、かあいそうだね。」

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と思い出したようにふっと言い、嘉七は、その都度つど、心弱く、困った。




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